上河内神楽団は、神楽と一緒に花火を奉納します。花火の種類は、吹火と傘火です。
この準備がなかなか大変で、9月に吹火用の孟宗竹と傘火用の真竹を切ります。吹火用は内径が15~20㌢のものを1㍍くらいに、傘火用は内径が7㌢程度のものを30㌢くらいに切って端の節を残してあとの節を抜きます。そのあと、田んぼに火を起こし、大きなオイルパン(バット)で湯を沸かし竹を茹でます。主な目的は油抜きです。
竹は、内側の節のところが出っ張っているので、専用に作ったナイフで凸凹がないように盛り上がりを落として、ヤスリで磨きます。こうして火薬などを入れる容器ができました。
次は、花火の色を出すために、火薬に混ぜる金属粉を作ります。昔は薬研でゴリゴリとやっていましたが、仕入れる業者さんに頼んで、針金程度の太さに切ってもらったものを石臼で挽きます。ここまでは、我々の住んでいる地元の山の中で作業をすることができます。
この先は、火薬を扱うので熊野町にある火薬工場で作業を行います。
金属粉を含め、火薬の材料である硝石、硫黄、炭、松炭をこれくらいの割合で調合せよと神楽団に伝わるノートに匁で表記してあるので、我々はグラムに換算して計ります。調合は、きめ細かく混ぜ合わせるため、撹拌機(コンクリートミキサー)で行います。
花火の種類によって少しづつ調合する割合を変えた火薬を作り、いよいよ竹に詰めていきます。
竹の底に新聞紙を詰め、その上に赤土を載せて底を作り、火薬をひと握りづつ入れて、棒と木槌でたたいて火薬を締めていきます。ひと握りの火薬につき90回から110回程度叩いて均一にミルフィーユ状に堆積させていきます。逆さにして火薬がこぼれないようになると合格です。この作業をいやになるくらい繰り返して火薬を均一の堅さで詰めることができると、安定した炎が継続して噴出します。最後に赤土で蓋をして完成となります。
こうしてできた吹火と傘火は、夜頃(秋祭り前夜祭)当日まで工場の保管庫に置いて、神楽の始まる直前に、消費場所である河内神社まで運びます。消費するときは、蓋に孔を開けて火を点けます。
工場での作業は、時々他の神楽団と一緒になることがあります。昔は、作業内容は絶対に見せなかったし、ましてや材料の調合割合は門外不出でしたが、今は情報交換をしてより良い花火を作っています。


